パラレルですよ〜 大丈夫な方はスクロール




































想い出は気付けば胸に積もり
彼と重ねた季節は三つ目を迎える。
閉じた世界で たった二人。
その予定は大幅に崩れてしまった。
自分の中に芽生えた新しい感情のせいで。
外の世界で手を繋ぎ、開いた世界で
お互いしか見ない関係。
そんな理想を抱いてしまった。




閉じこめた自分が欲するには、あまりにも身勝手な欲。
それでも夏のあの日、共に外に出る事を
了承した彼に頬が緩んでしまう。
何故だか夏は、人間を奔放な気持ちに
させる力があるらしい。
では、秋は?
秋はどんな彼を見せてくれるのだろうか。
楽しみでいて、だけど怖い。
外へと連れ出したい。
だけど、ずっと永遠にこの腕の中に閉じこめておきたい。
そんな相反する願いが、自分の中に渦巻いた。




逝く夏、秋の産声。





まだ暑さを引きずる秋の初め。
秋刀魚を突きながら、お誕生日おめでとうございますと言う可笑しさと、擽ったさを知った。
当然、食卓に乗ったのは秋刀魚だけでは無いだが。
甘いものはお互い嫌いじゃ無いが、如何せんホールケーキを完食するには辛そうで、だから小さなカットケーキを幾つか買って、ささやかな、でも幸せな、カカシの誕生日を過ごした。
その後、布団の中でイルカ自身をペロリと食べられてしまったが、それはまあ、本望なので良しとする。
ただ、場所はいつもの隔離部屋では無く、母屋のカカシの部屋で、だったが。









折角の誕生日、イルカはカカシのお願いをすべて享受する気満々で居た。
二人で食材を買いに出かける所から始まり、いつもは任せっきりの料理の支度も狭くは無い台所で並んで作業して。
時折訪れる甘い空気に逆らわず、目があったらキスをして、調理の手が止まっても、食事の時間が遅れても、二人しか居ないのだから構わないだろうと、第三者が目撃したら確実に砂を吐く雰囲気の中、過ごした。
医院在勤看護師お奨めの店で買ったケーキを冷蔵庫から取り出し、秋刀魚の塩焼きにケーキという可笑しな取り合わせに、顔を見合わせて笑い合った。
ゆっくりと時間が過ぎる。
でも、気付けば結構な時間になっていて、今日と言う日を祝日では無くしてしまった政府を、心の中で詰る。
祝日であったのなら、昨夜から共に居れたのにと。
何種類か作り合った惣菜に、互いの食の好みを垣間見る。
それすら嬉しく楽しいのに、甘い雰囲気は留まる事を知らず、皿の上には同じものが乗っているにも拘わらず、箸で摘んだそれを相手の口元に差し出すのを交互に繰り返した。
いい年した男二人が馬鹿な事をと、咎める存在はどこにも居ないのだ。
だからかイルカも、照れつつも口を開き、笑う。
隔離部屋で睦み合う、閉ざされた空間故の体の開放とは異なる開放感を、楽しむ余裕すらあった。
夏場、計画した通りには行かなかったが、それでも二人で外の世界に出かけたのが功を奏したらしく、イルカの隔離部屋への執着が、ほんの僅かずつではあるが薄れて来ているようだった。
しかし、あの隔離部屋──カカシの父親が妻の為に設えた閉鎖された空間は、イルカの人生を変えた場所となり、今のイルカ自身を、カカシの恋人おいう彼を作り上げた場所でもあったから。
だからイルカはあの空間に固執する。
何よりも、閉鎖されているが故に、カカシを誰かに盗られる心配も、自分以外を見る心配もしなくて良いのだ。
イルカにとっては、羊水に浸るかのように、酷く安心出来る場所で。
あの場所で、カカシに添うように作り変えられた自分の体は、彼を受け入れる為に存在する。
セックスもそうだが、精神面でも。
カカシの全てを受け入れ、享受する。
そんな自分に、イルカは満足しているのだから、おかしなもので。
つい一年程前の自分には想像できない変化だろうと、内心笑ってしまう。




広くフラットな浴室で適度にじゃれ合って、それでも熱を発散するには至らせず、高揚を伴ったまま、濡れた髪を乱雑に拭い合って寝室へと移る。
シンプルだけど雑多な印象のカカシの寝室。
そこに抱き合うように縺れ込み、本日何度目になるのか判らないキスを交わす。
浴室で思う存分じゃれ合ったせいか、ベッドの上で交わす初めてのキスは、最初から貪る勢いで、相手を求めるものだった。
セックスに至る為の、相手と繋がるようなキス。
唇を開いて深く重ね、吸い付き、甘噛みして、絡める。
顎に溢れた唾液が流れ、その軌跡を舌先で追って、また唇に戻って来る。
吐息ごと、魂ごと食べられてしまいそうなキスの応酬に、自然と息は上がり、興奮を隠せずに髪をまさぐる。
痺れを切らしたのはどちらの方か、互いの体にに絡めていた両腕を弛め、知り尽くした相手のイイトコロを的確に攻めて行く。
「…ん」
胸の尖りを押し潰すように捏ねられ、イルカの腰が跳ねた。
「痛い?」
「へい…き…」
摘まれ、そこから蟠る痺れに、イルカは唇を噛む。
「ほら、唇噛まないの。痕付くじゃない」
伸ばした舌先で、軽く噛み締めた唇の表面をなぞられ、背中に鈍い震えが這い登る。
「や…もっと、ちゃんと…」
「ちゃんと?」
「…カカシさん意地悪だ…」
一番熱が集中して辛い場所を、態とはぐらかすカカシに焦れ、イルカが上目で睨め付ける。
もっとも、潤んだ瞳でそれをされても、可愛いだけなのにと、カカシは小さく笑ってしまう。
「もう!」
「ああ、自分でしな〜いの、イルカ先生だって、オレの、触ってくれて無いじゃない?」
「だからって…」
焦れて自分の性器に伸ばしかけた手を阻まれ、イルカは悔しげにカカシを見上げる。
そして言われ、視線を動かせば、カカシの性器もまた、雫を零しつつ開放を待つ状態だった。
「ほら、オレのも可愛がって?」
掴んだイルカの手を下肢へと導き、完全に勃ち上がった自分の性器を握らせ、そのまま数度扱かせる。
「ん…」
カカシの唇から零れる艶めいた吐息に後押しされ、イルカの手はカカシの助け無しに愛撫を重ねる。
カカシも組み敷いたイルカの体をあちこちまさぐり、口吻を重ねて最初の極みを目指す。
「カカ、シさん…俺…っ」
「ん、待って、ちょっと待ってね」
下肢の下に敷き込んでいたイルカの腿を掴み、膝頭を押して開脚させる。
「ちょ…!」
「手は休めないで、ほら、凄いよ…お互いもうグチャグチャ」
淫猥な粘着質の音が、イルカの耳にも届き、思わず視線を向ければ、完全に勃起した二本のそれが、触れ合う近さで白濁混じりの雫を流しているのを見てしまう。
サイドランプを灯すのを希望したのは、言わずもがなカカシである。
誕生日だし、と、気安く、それでも恥ずかしさを押さえて了承したイルカは、こんなに明るいなんて詐欺だと、羞恥の余りに全身を赤く染めた。
オレンジに近い灯りに浮かぶ、淫靡な光景。
下手に陰影が付いて浮かぶ分、白熱灯の白々しい灯りの下よりも遙かにいやらしく見えてしまうのだ。
「ほら、まとめて可愛がって、オレはこっちを可愛がってあげるから」
言ってカカシが腰を押しつけて来る。
重なった互いの性器が、ぷるんと弾力で弾かれ揺れるのを、イルカは真っ赤な顔で凝視し、戸惑いを見せながらも、結局カカシの云う通りにしてしまうのだ。
両手で互いの性器をまとめて握り込み、それ同士を擦り合わせるように刺激する。
初めての行為では無いが、やはり恥ずかしさは付きまとう上、自分の動きを目視できてしまうのがいたたまれず、かと言って目を離す事も出来なかった。
だって、カカシが感じてくれている。
イルカの拙い愛撫で、性器の感触で、トロトロと白い液を零してくれているのだから。
「ん、上手…」
僅かに詰めた吐息に、更に気分が高揚するが、次いで与えられた感触に、あからさまにイルカの体が跳ねた。
「そこ…ッ!」
「うん、イルカ先生の気持ちイイとこだよね?」
背骨を辿っての最終地点。尻尾の名残を軽く擽り、更に奥まった場所に辿り着いたカカシの指。
先程、浴室でじゃれあった時に、深く中に入り込むまでは至らず、それでも散々悪戯された、第二性器と化した、イルカの排泄器官。
そこは悪戯のせいか程良く解れ、小さな音を立ててカカシの指を難なく迎え入れる。
「さっき少し弄ったせいかな?すごく柔らかい」
「あ、ぁ…まって、お願い、待ってくださ、い…」
「ここは気持ち良すぎちゃう?」
クチリと音を立てて、カカシの指が中を抉る仕草で半回転した。
「ひゃ!」
「可愛い…」
耳朶にそう囁かれ、イルカは潤んだ瞳でカカシを睨む。
そして止まっていた手の動きを再開させた。
反撃のつもりではあるのだが、如何せん負けている感があるのが否めなかったが。
「ほら、一緒にイこ?」
囁く音量で、低く欲に濡れた声がイルカを唆す。
その言葉に返事すら返せず。中を弄られる刺激に流されそうになりながら、必至に縦に振って頷いた。
その様すら、カカシにとっては情欲の対象で。イルカの手に握り込まれたカカシのそれが、グンと嵩を増し、限界を示す。
無意識に互いに腰を押し付け合い、更なる刺激を求めて相手を責めた。
「あ、…ぅ」
「ん…」
仰け反るイルカの喉。
その喉仏の辺りに噛み付き、カカシは胴震いをする。
繋がっても居ないのに爆ぜた性器。
二人分の精液が重なった体に飛び散り、腹と腹を粘液で繋ぐ。
灯りの下、まざまざと目にしたその光景は、酷く淫猥で、次なる欲を煽るには十分な要素と成り得てしまう。
どちらともなく唇を寄せ、キスを交わし、ヌルつく手で飛んだ飛沫を塗りつけるように肌を辿る。
「お誕生日、おめでとう、ございます…」
「ん。イルカ先生に言われるの、何度聞いても嬉しい。ありがと」
そしてまた貪るのだ、唇を体を。
飽きず繰り返す抱擁に、気付けばとうに日付は越えていりするのだった。

【完】

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