パラレルですよ〜 大丈夫な方はスクロール
外の世界で二人に浸りたいと思うのは、我が侭な事なのだろうか。
閉ざされた空間から、一歩踏み出した今、
普通の恋人みたいにもふるまってみたいと、新たな欲が芽生えてしまった。
折しも季節は夏真っ盛り。
巷に溢れ返る開放的な恋人達にあてられてか、
北の地には珍しい炎天下の下、手を繋いで歩いてみたいと思ってしまう。
「…海、行きませんか?」
夜、いつものように抱き合い、交ざり合い、ぐちゃぐちゃになった余韻を重なり合って味わいながら、ふと思い付いたように言ってみた。
本当はずっと、それこそ夏が始まり、馬鹿みたいに暑い日々の中、常に考えていた事なのに。
「海、ですか?」
唐突なカカシの発言に、呼吸を整えていたイルカが数拍遅れて問い返す。
「ええ、これだけ暑いと、妙に水に触りたくなりません?」
吐精の勢いのまま、仰向けに横たわったイルカの胸の上、汗で滑る肌に懐きながらカカシは上目でイルカを見返す。
汗だけでは無い水気が頬に触れるが、厭う事無くカカシはそこに頬擦りを繰り返す。
時折、余韻のせいで勃ち上がったままの突起に触れて、イルカの体が僅かに揺れる様を楽しみながら。
ヒクリと喉奥に息を吸い込むような呼吸、そして僅かな間の後、イルカは自分の胸に懐くカカシの、汗ばんだ髪を撫で、苦笑混じりに言葉を返す。
「その発想は判るような気もするんですが…、海、ですか…?」
まるで確認のような言葉に、カカシは内心小首を傾げる。
夏→恋人達→海。
単純な発想がいけなかったのだろうか。
しかし、恋人という地位に収まったからには、ベタな事もやってみたいと思ってしまうのだ。
本当に人間とは欲深に出来ている。
一つ望みが叶えば、すぐに次ぎを求めてしまうのだから。
傍に居られれば、触れられればそれで良いと思っていた時期が懐かしい。
それでも、外の世界でカカシと会う事をしたくないらしいイルカの、否という応えは予想はしていた。
それでも食い下がってみても罰は中りはしないだろう。
「…駄目、ですか?」
監禁から始まった関係故か、イルカはカカシの持ち家たるこの家の中だけで過ごすのを好むのだ。
しかも、母屋から渡り廊下を隔てて存在する、隔離部屋で。
ここは先代──カカシの父親が妻を世俗から隔離する為に設えた部屋。
彼は妻を愛し、愛しすぎた故に、他者の目に晒す事を厭い、その妻もまた、夫を愛していたが故に、彼の仕打ちを許容した。
彼等の実子であるカカシでさえも、隔離された母親とは、滅多に会えぬ状態で、その異様な関係を見て育ったせいか、イルカを見つけ、恋に落ち、冬の決して短かく無い期間、ここに閉じこめ、その体を蹂躙した。
しかし、結果、イルカはカカシの仕打ちを許し、あまつさえ恋人の地位までくれたのだ。
あの時の歓喜をどう表現して良いのか、カカシには判らない。
奇跡なんて信じていない。だが、あれは奇跡としか言いようの無い事だと、未だに思うのだ。
そして今、イルカが週末毎に、カカシの家に訪れる形で関係は成り立って居る。
それでも最近になってからは、この隔離部屋から出て、母屋で食事を摂ったり、はたけ家の犬達を洗う為に広く改築された母屋の風呂で楽しんだりと、ほんの少しずつではあるが、二人を孕んだ世界が広がりつつあるのだ。
家の中から外へ。
それがカカシの次の目標。
閉じこめた自分が望むのは間違っているのかもしれないが、それでも、外の世界をイルカと並んで歩いてみたいと願うのだ。
特に今はイルカの仕事が半ば休みの状態で、諸々の業務はあれど、カカシの家から出勤し、ここに戻ってくる至福の期間なのだから、どうしても欲が膨らんでしまう。
「駄目、と言う訳では無いんですが…」
「何か問題でも?」
口籠もるイルカに、カカシは尋ねる。
どこか言葉を濁すイルカの様子に、海に関して何か拙い事でもあるのかと。
それこそ、嫌な思い出でもあるのだろうかと危惧してしまう。
「今、夏ですよね?」
「ええ、夏です」
夏も夏。
真っ盛りと表現できてしまう程に暑い日々。
湿気が少ないだけマシだと呪文のように唱えながらも、人体の体温を越える温度に辟易する毎日。
それでもイルカと過ごす夜には少し温度が下がり、坪庭に面したこの部屋には、風が入るせいか日中程は酷くない。
もっとも、障子を閉めて二人で隠り、運動した後である今は、茹だる程に暑いのだが。
「ここいら近辺で海って言ったら…」
「ま、ご存じの通り、あそこです」
「…ですよね」
カカシの言葉に対する確認。
その答えにげんなりした様子を見せるイルカ。
「何か問題でもあるんですか?」
また当初の問いかけに出戻ってしまうが、イルカの大仰な溜息に、カカシは懐いていたイルカの胸から体を起こし、姿勢を変える。
イルカの顔の横に肘を付き、上から覗き込むような至近距離に、困ったような黒い目があった。
「カカシさん、夏にあそこに行った事無いでしょう?」
確信めいたイルカの問いかけ。
何故判るのだろうかと内心不思議に思いながらも、カカシは肯定の意を返す。
そしてイルカの苦笑。
「夏の浜辺って、何かあるの?」
含みを感じるイルカの苦笑にカカシが観念して問えば、困ったように微笑み、汗ばんだ髪を優しい仕草で後ろへと流される。
露わになった額に、伸び上がり口吻け、イルカはカカシを抱き締める。
「ごめんなさい…あなたはきっと知らないんですよね」
何を知らないのだろうかとカカシは首を傾げるが、夏場の海、しかも学校関係が休業中の今、家族連れでごった返しているであろう海水浴場。
イルカは教師としての職務故に、監視員として駆り出される事もあった為に知っている。
地元の海水浴場。
恋人達のお約束な夏場のデートコースである上に、今時期は家族サービスの一環で更に人が増えて居るのだ。
きっとカカシはその事実を知らない。
家族と縁が浅かったカカシは。
「あのですね…」
しかしあの状態を何と表現すれば良いのだろう。
分かり易く表現できる言葉を模索し、イルカは浮かんだ言葉を継げる事にする。
恐らく飾り立てるよりも端的に、その様子を脳裏に浮かべられるだろうと。
「芋洗い状態です」
「…………はい?」
「ですから、芋洗い状態」
情事の後の余韻を楽しんでいた筈が、何が悲しくて芋洗い発言。
それでもこれ以上にしっくり来る言葉が見つからず、イルカは自分の上に居るカカシの頬に手を添えて引き寄せ、半開きの唇に触れるだけのキスをした。
「あそこの海水浴場はですね、夏休みの時期、彼氏彼女もごった返しますが、それに上乗せで家族連れもごった返すんです」
「はあ」
「本当に芋洗いみたいな光景ですよ…泳ぐ隙間も無いんですから」
どこか遠くに視線を投げるイルカの表情に、カカシは聞かされた言葉に尾鰭は無く、紛れもない事実なのだろうと納得できた。
「しかも、水際歩けば子供に当たる、360度、人、人、人!」
「そ、そうなんですか…オレ、世間知らずでしたか?」
思わずイルカに覆い被さっていた体を起こそうとすれば、背中に回った腕に引き留められ、またキスが与えられた。
苦笑するような、それでいてどこか悪戯気なイルカの視線。
「良いんですよ、カカシさんが知らなくても良い事は、世の中いっぱいあるんですから。逆にカカシさんが当然のように知っていて、俺が知らない事だって沢山ある筈です」
やんわりと言い含めるようなイルカの言葉。
知らない事を詰らない。
知っている事を驕らない。
自然体で酷く優しいその口調と仕草に、カカシは陶然としてしまう。
本当に凄い人を恋人にできたのだと、イルカを見つけた自分を褒めてやりたい衝動に駆られてしまう。
「でも、海かぁ…」
「イルカ先生、海は嫌い?」
「逆です、逆。好きなんですよ、実は」
「じゃあ、さっき困ったみたいだったのは、場所のせいですか」
「はい」
流石にカカシも芋洗い状態だと知っていれば、地元の海水浴場は提案しなかっただろう。
それでも今は夏休みなのだ。
どこの海──遊泳が開放されているに限る──も賑わいを見せているに違いないであろう事は予想できる。
「もっと早く計画して、いっそ海外に誘えば良かったかも…」
「随分思い切った考えですね」
呟くように自分の考えの甘さをごちれば、イルカがクスクスと笑いながら返してくれる。
「海外じゃなくても…そうですね、どこか田舎の海辺りだと少しはマシかもしれませんよ?」
逆に提案されて、カカシは嬉しくなる。だって、イルカが外に出る事に同意してくれたも同じなのだから。
「そ?イルカ先生、どこか知ってる?」
「そうですねぇ…車で二時間位行けば、無い事も無いです…岩浜ですけど」
「岩浜?」
「良いですよ、岩浜!ウニとアワビが美味い美味い!」
それは海そのものよりも、海がもたらす恩恵の味ではと、カカシは苦笑しながら、海の幸に黒い瞳を輝かせるイルカの髪を梳く。
「折角ですから一泊位で行きますか?」
「カカシさんの仕事は?」
「ウチは先に休みを入れて、お盆の間は受け入れ体勢にしようと思っていたんで大丈夫ですよ、いざとなればアスマんトコもありますし」
「そ…そうですか、俺の方も明後日位には完全な休みになります」
予定を確認して、至近距離で見つめ合い、笑う。
「問題は宿ですけどね」
「民宿の一件でもあれば御の字です」
互いの髪をまさぐり、キスの合間に言葉を交わして笑い合う。
徐々に体の表面に感じる温度が高くなり、立ち上る汗が湿気となって、包むように纏わりつく。
それでも離れようとは思わない。
それどころか、互いに回した腕の力は強くなるばかりで。
口吻けはいつしか執拗に、深いものへと変化する。
カカシはそっとイルカの後腔に指を忍ばせ、遊ぶように表面を撫で、浅い所を擽る。
そうすれば、焦れたイルカが足を開き、股を自分へと晒してくれるのを知っているから。
悪戯に浅く入れた指をくるりと抉るように動かせば、グチャっと粘質な音が響く。
つい先程の、情事の名残。
綻んだイルカの粘膜からトロリと零れる白濁の量に、カカシは苦笑するしか無かった。
自分の、イルカへの執着が現れているような気がして。
徐々に開かれるイルカの膝を掬い上げて大きく割れば、尻の狭間を流れてシーツに液溜まりを作る自分の精液。
「見ないで、下さい…」
「何で?出て来てるの、オレのでしょ?」
「…恥ずかしいからッ!」
何を今更と思いながらも、恥ずかしがり屋のイルカを好ましく思う。
何度抱いても、どんな恥ずかしい行為をしても受け入れてくれるのに、どこか初心めいた仕草が残っているのが嬉しく、楽しい。
「オレも頑張ったもんだね〜、まだ出て来ますよ」
大きく広げさせた足をシーツに落とし、カカシは再び自分の指をイルカの中へと潜り込ませる。
中で指を軽く曲げ、掻き混ぜるように動かせば、後から後から白濁が溢れ出て来た。
「これだけ出して、まだ勃つんだもん…オレもイルカ先生も、まだまだ若いよね」
「何、馬鹿な事…ぁッ!」
強く内壁を抉った瞬間、イルカの背が跳ねる。
どうやらイルカのお気に入りの場所を抉ったらしく、ビクビクと体を跳ねさせながら、イルカの性器が勃ち上がるのが見えた。
「ほら、イルカ先生も元気だ」
完全に勃ち上がり雫を漏らすイルカの性器を軽く指で弾き、カカシはいやらしく嗤う。
後ろを弄られて勃起するイルカ。
自分がそうした。
自分だけに開かれた、カカシだけの場所。
先程までの情交の名残でぬかるむ後腔から指を引き抜き、触らずともイルカの痴態だけで臨戦態勢になった自分の性器の先端を押し当てる。
「待っ…て…」
「そんな意地悪言わないで、入らせて、イルカ先生の胎に」
ぐっと腰を進めれば、殆ど抵抗無く張り出た頭が内部へ潜り込む。
「やぁ…っ!」
「うわ、トロトロ…気持ち良い…」
その心地よさをもっと味わいたくて、無意識で逃げようとするイルカの腰を掴み、一気に突き上げた。
「あ、ぅッ」
「ゴメン…でも、凄い…イルカ先生の胎」
奥まで付き入れたカカシの性器全体を肉の輪が締め、更に内臓直接の温度と、細かな痙攣にも似た振動。
動いてもいないのに気持ちいい。
このままずっと繋がっていたいと思う位に。
「も、酷…ぃ…」
「痛い?」
その問いかけは即座に否定される。
否定しながらも、実際は痛むのだろう、イルカは忙しない呼吸を繰り返し、胎に入り込んだカカシを許容しようと努める。
そんなイルカの態度に歓喜を覚えつつ、カカシは穿たれた衝動で弾けたイルカの性器を手で包み、扱いた。
それは間を置かず硬さを取り戻し、やがてカカシの指を濡らす程に淫液を漏らすようになった。
後ろからも前からも、グチャグチャという淫猥な音が鳴り響き、二人の鼓膜を侵す。
音は興奮材料となり、カカシは柔らかく解れているイルカの胎を荒らす。
付き入れ、穿ち、抉り、その間も勃起した性器への愛撫は止める事は無く。
イルカは翻弄され、喘ぐ。
噛み締めた唇が決壊し、吐息の隙間から紛れもない嬌声が漏れた。
「や、待って、駄目…ッ」
「ごめん、無理…」
カカシが動く度に肉が弾ける音がし、イルカの腰骨が軋みを上げるが、その痛みや衝撃を遙かに凌駕する快楽の波が押し寄せる。
ともすれば攫われそうな程の高波に、ギリギリの所で踏み留まり、イルカはカカシの首に縋る。
真夏の夜、締め切った部屋で行う淫行。風は通らず、互いの体温で部屋の温度はたちまち上昇し、汗と体液で湿度も上がる。
それでもこの行為は止められない。
暑いからと、体を離そうとは思わない。
「あ、あ、あ…も、駄目、出るぅ…」
「待って、もうちょっと、一緒に、イこ?」
限界を示して仰け反るイルカの浮いた腰を抱き、恥ずかしい程に足を開かせ、カカシは密着する。
「そこ、やぁ…ッ!」
体ごとのし掛かるように体重を掛ける体勢のせいで、正面からなのに、あり得ない位置にカカシの性器を感じ、イルカは掴んだカカシの肩に背に、爪を立てた。
「痛ッ」
丸く短い爪が刻む、赤い軌跡。
そしてカカシも間近に迫ったイルカの首筋に唇を埋め、赤い斑点を点々と付けて行く。
首筋から始まって、胸元まで落とされた赤い所有の花。
途端、知らず締めてしまったらしく、奥の奥に飛沫が叩き付けられる感触。
「ぅ…あっつい…」
思わず口にした恥ずかしい言葉。
それに羞恥を感じる暇も無く、断続的に流し込まれたカカシの精液に、体が震え、痙攣じみた反応が止まらない。
汗だくになって抱き合って噛み締める余韻──後日、お互いがお互いの体に刻んだ赤い痕のせいで、人前で肌が晒せなくなり、計画が潰れたのは言うまでも無いだろう。
【完】
毎度の事ながら、ギリギリで作っておりまするる〜。
しかも努力も虚しく、毎回余る。因みに10部程度です。
今回は、何だかとっても閑話休題ちっくでしたが、いかがな
もんでしょうかね?
upが遅れてゴメンナサイ。純粋に忘れてました…。