お題2/撫でる。




イルカ先生の手は不思議だ。
怒鳴られ、キツイ拳を脳天に食らっても、あの大きな手で頭を撫でられると、みんな笑顔になる。
拗ねてた子も、泣いてた子も、イルカ先生に頭を撫でられると、途端に笑顔を見せる。
その顔は、イルカ先生に怒られる前とはあきらかに違い、新たな何かを目に宿していた。


イルカ先生の手は魔法の手。
彼の存在は、誰にも代われず、唯一と言っても良いだろう。
少なくとも、彼の生徒に取っては身近な分、火影よりも大きな存在。
彼等が成長し、やがて中忍となり上忍となった時、きっと気付く。
イルカ先生が自分達に取っての里であり、進むべき道に迷った時、道標になる存在であると。
幼少期の一番大切な時間。
そこを思い出せば、必ず居るのだ。
だから、イルカ先生の回りには卒業生も集まる。
そしてオレはその度に苛立つ。
もう幼いとは言えない、元教え子の存在達に。


 ※


「──だってねぇ…憧れって、恋に転化しやすいじゃないの」

呟やいた言葉が届いてしまったのか、イルカ先生の眉間に見事な皺が寄せられた。

「この状況で、そんなアホな事を言いますか?」
「え〜、今日だって来てたじゃない、元教え子」
「来てましたけどね…」
「教えが必要なら、上忍師に請えばいいでしょ」
「どの口がそんな事を言うんですか。俺に下忍を部下だと言い切ったのは、アンタでしょうが」
「古い事持ち出さないでよ…あの一件が無ければ、イルカ先生とこうして無いんだから」
「…後悔、してるんですか?」
「まさか!」
「生徒の事に関しては、あり得ないとは思いますが一応気をつけますから…今は」
「うん」
「はやく…もっと、奥」

囁く音でねだり、足を広げて股を晒す。
あからさまな言葉と、態度で煽り、促す。
オレに組み敷かれて足を広げられた状態で、自ら腰を揺らめかす様は正に鼻血もので、中途半端に埋め込まれたオレの性器を奥に招こうとする動きに、思わず呻いてしまう。

「…っ」
「…ぃっ…そ、んな中途半端な位置で、デカくしないでくださいッ」
「そんな事言われても、モグモグしてるのイルカ先生でしょう?」
「アンタがその位置で止まってるからでしょう!」
「はいはい…奥まで行くから、息、吐いて?」

切羽詰まってたのか、イルカ先生は素直に息を吐く。
タイミングを合わせて、深く深く、彼の中に潜り込んだ。

「ん…っ」
「は、気持ちい…」

グチッと何かが潰れたような音が鈍く響き、イルカ先生が痙攣するように震えた。
開いた唇を閉じる事を忘れ、小さな喘ぎが繰り返されている。
どうやら、彼のご要望通り、奥の奥まで到達できたらしい。

「イルカせんせ、息して」

唇が開きっぱなしのイルカ先生に呼吸を促すが、衝撃が上手く散らせないらしく、息が吸われる様子が無い。
だから口付け、息を吹き込んだ。
途端、ひゅっと風のような音がイルカ先生の喉奥から聞こえ、次いで小さく咳き込む。

「大丈夫?」
「確かに強請りはしましたけどね、アンタ唐突なんですよ…」

恨みがましい目で睨まれても、潤んだ目だから可愛いだけだし。
不貞腐れたように尖った唇に、吸い付くだけのキスを落として、ご機嫌を窺う。
チュっと可愛らしい音がお互いの唇の狭間で響いて、額を合わせて苦笑しあう。
イルカ先生の呼吸も落ち着いたし、物足りないのか深くオレを咥え込んだ腰が揺れる。
それをお許しと受け取って、ゆっくりと腰を引いた。
粘り気のあるローションがイルカ先生の中で温まって、大量に使ったお陰か、グチョグチョ、ヌルヌルで動きもスムーズ。
さ、お互い天国目指して没頭しましょうか。



達した後の、浸っていたい倦怠感。
イルカ先生は重いだろうな〜と思いながらも、彼の胸に汗が滴る頬を乗せ、懐く。
呼吸に隆起する感触と、汗ばんだ肌、何より、イルカ先生の鼓動が耳に気持ち良い。
常よりも格段に早い鼓動。
オレの腹に当たる彼の性器も今は項垂れていて、吐き出された体液が肌の間で滑る感触。
この時間が嬉しい。酷く満たされ、セックスの最中より、お互いを近く感じるような気がするから。
と、不意にオレの頭にイルカ先生の、大きくて武骨な手が、ポンと乗った。

「…?」

何だろうと視線を向ける前に、ワシャワシャと髪をかき混ぜる仕草で頭を撫でられた。
一見すれば荒い仕草の、だけど温かくて優しいイルカ先生の掌。

「何て顔してんですか、して欲しかったんでしょう?」
「…バレてましたか」
「あれだけ見られてれば、流石にね…」
「うわ…恥ずかし…」

本気で恥ずかしくて、顔を伏せた。
それでも撫でるのを止めて欲しく無くて、咎めず、頭はしっかりと差し出して。

「子供の頭を撫でるのは職業柄普通にやりますけど…大人の頭を撫でたのは初めてです」

苦笑混じりに言われ、少し複雑な気分を味わったが、チラリと仰ぎ見たイルカ先生の顔が、凄く嬉しそうだったから、こっちも何だか嬉しくなった。
凄く、気持ちも気分も良い。
撫でられて腹を出してる猫の姿を思い出し、こんな感じなのかなと思ってしまう。
もう、好きにしてッ! と、腹でも何でも晒してしまいたくなるような気持ち良さ。
それが伝わってしまったのか、イルカ先生が笑いながら言った。

「何だか…獣のグルーミングをしてるような気分です──肉食で大型の」

丁寧に、額に張り付いた髪を掻き揚げられて見上げれば、頬を撫でられ、唇を指が辿る。
少し荒れて硬くなった皮膚がイルカ先生らしくて、舌を伸ばしてその指を舐めた。
ビクリと引かれた指を追って捕まえ、指先にキス。
次にイルカ先生の唇にキスをする。
口付けてる間中、彼の手はオレの体のあちこちを撫でる。


やっぱり、イルカ先生の手は魔法の手。
だってこんなにも気持ち良い。

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日記からの移動。ジャンル違いのリア友Y嬢からのお題。
数年がかりでチマチマと。