フォーリン・ラブ。




『カカシさん』と自分を呼ぶその声音が好きだと、カカシは思う。

いっそ呼び捨てにしても良いと言ったのだが、上忍相手にそれは…と、結果さん付けで落ち着いた。

きちんと低音の男の声なのに、何でこんなに気持ち良いんだろうとも思う。
例えば報告書を片手に受付に行けば、『お疲れさま』と疲れも吹き飛ぶ労いの言葉。
ササクレた気分すら凌駕する声。

声だけじゃなくて、笑顔も好き。労いの言葉と共にくれる笑顔。
目にしたこっちまで融かされそうな、優しい表情に癒される。

ああ、まただ。
また、自分は彼の事を思い出して、癒されてる。

これはもう、自嘲するしかない。

男で、美形の範疇からは少し外れる相手。
でも笑顔は極上。
多分性格も。
じゃなければ、サスケとナルトと言う2大問題児が懐く筈が無い。
あのサスケが『先生』と呼ぶのは後にも先にも、きっと彼だけだろう。

思って胸が温かくなるのを感じた。
こんな感覚は初めてで、温かい塊は四肢に巡り指先まで浸透して甘い痺れを残す。

好きなんだろうなと思う。
誰にも盗られたくないなと子供じみた事も思う。
何も無かった空虚な感情に、初めて波紋が投げ掛けられた。

足が勝手に方向を定める。
磁石でもていてるかのように確実に。
【イルカ先生】に向かって。

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初期携帯メモから。