「オレの前に、何人と寝たのよ?」
言われたその時の衝撃は、今でも忘れない。
おそらく、生涯忘れる事はできないだろう。
「初めてだって言っても、信じねぇな、アレは…」
イルカは小さく呟き、重い溜息を零す。
正直、あんなに乱れるとは思いもしなかった。
正真正銘、自分は初めて受け入れる側になったというのに。
相性が良いで済まされない位に、酷く感じて、乱れた。悶えた。
後腔で感じる快感は、深く、そして長い。
初めて知ったその感覚を思い出せば、今でも体の奥が熱くなり、鳥肌が立つ。
その感覚に知らず零れた艶めいた溜息に、イルカは自己嫌悪する。
感覚を踏襲して次を期待する自分が、酷く浅ましく淫らな存在に思えて。
だけど、とも思うのだ。
確かに自分は初めてだった。
ただカカシへの好意で開いた体。
男としての矜恃と本能を理性でねじ伏せ、震える指先で彼の背中に縋ったのに。
知らない感覚に悶える自分を見下ろし、放たれた言葉は確実にイルカの心に傷を残した。
カカシの前に何人の男を咥え込んでいたのかと問われた。
勝手に跳ねる体、戦慄く肌に、カカシがイルカの過去を訝しんだのだ。
きっと初物に拘る人間では無いと思う。
例え、カカシの前に男が居たとしても、イルカが初めてじゃあなくても、ほんの少し残念に思うだけで、そこに変なこだわりは見せはしないだとう。
だけど、イルカは傷ついた。
震える指を叱咤して縋り付いたのに、強ばる膝を無理に押し広げ、カカシの前に全てを晒したのに。
それら全てを否定された気持ちになってしまった。
「さぁ…何人…でしょうね」
悲しいと感じた気持ちを押し殺し、囁くように返した。
ほんの少しの意趣返しのつもりで。
それが更にカカシの妬心を煽ると判っていても、言わずにはいられなかった。
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